2019年5月30日木曜日

スヌーピーたちの聖書のはなし



スヌーピーたちの聖書のはなし
ロバート・L・ショート 著
笹野洋子 訳


1999年11月15日 第一刷発行

題名の通り、チャールズ・M・シュルツの漫画「ピーナッツ」から聖書的意味合いを読み取るという本。日本では漫画自体が「スヌーピー」という名前で知られているのでこの題名になっている。訳者のまえがきによると、原題は「The Gospel According to Peanuts」で、そのまま日本語にすれば「ピーナッツによる福音書」となるのだそう。この本には漫画そのものが多数引用されているが、漫画のセリフの翻訳はおそらく訳者によるもので、谷川俊太郎訳とは違う。

思いがけず、かなり本格的に聖書そのものというかキリスト教の教えを語る本だった。筆者はアメリカの「教役者」と呼ばれる、いわばおそらく「牧師」や「伝道師」のような人なので当然か。「ピーナッツ(スヌーピー)」にはキリスト教的な趣を感じる部分が確かにある。この本で紹介されていたが、シュルツ自身がかなり熱心に聖書を研究した人で、敬虔な人だったらしい。おそらくは、知らずのうちに教訓的になってしまっていたというよりは、ある程度狙って面倒にならない程度に漫画の中にキリスト教的価値観を紹介している部分があるということのようだ。

「…聖書のことを知れば知るほど、私は自分が心から神を愛していることに気づいたものだ。あらゆるものにひどく心を悩ませ落ちこんでいたときに、そこから回復することができ、いろんな経験を切り抜けることができたのは、神のおかげだと私は気がついた」(シュルツ)

「ピーナッツ」を軸にして他にも様々なところから引用がされている。聖書そのものからキルケゴールやヘーゲル、シェイクスピア、T・S・エリオットなど。旧約聖書のヨブ記からの引用が目立つのはチャーリー・ブラウンに通じるところが多いからか。

そして、引用された漫画は殆どスヌーピー、チャーリー・ブラウン、ルーシー、ライナスしか出てこない。中でもルーシーとライナスの姉弟が目立つ。この2人は聖書的価値観を投影するのに向いていたということなのかもしれない。ちなみにペパーミント・パティ&マーシーなどは全く出てこない。

誤解のないように、個人的に「ピーナッツ(スヌーピー)」はおそらく全部ではないと思うが、かなりの数を持っていて読んでいる。その中に宗教的奥深さを感じたことは確かにあるが、悪い意味で説教臭さを感じたことはない。「ピーナッツ」はあくまで面白いマンガである。シュルツが敬虔なキリスト教徒だったというのもこの本を読んでわかった逆向きの話で、「ピーナッツ」はキリスト教と関係があるとも思わないし、キリスト教について教養がなければ楽しめない、価値がわからないというものではない。その中からキリスト教的なものを読み取るというのがこの本である。

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