ツァラトゥストラ(上)(下)
ニーチェ 著
丘沢静也 訳
(上)2010年11月20日 初版第1刷発行
(下)2011年1月20日 初版第1刷発行
「ツァラトゥストラはかく語りき」という題名で聞いたことがある。原書は元々4巻に分かれているそうで、この訳書では(上)に1、2巻、(下)に3、4巻という形になっている。WIkipediaを見て、この日本語訳の多さに驚いた。独特な文体はわかったようでわからない、解釈も幅が広く、魅力的だということだろうか。
序盤というか冒頭はかなり物語風に始まるのだが、それ以降は「ツァラトゥストラはこう言った。」という説話が続き、物語性はあまりない。それまでの時代までのキリスト教批判、そのキリスト教と「癒着」した西洋哲学への批判が主題である。そしてこれは木田元がいうところの「反哲学」へと繋がる。
堅苦しくはなく、ツァラトゥストラが力強く、かなり自由に語っている。こう言ったら怒られるかもしれないが、彼はなんとなく「神がかり」的な感じで、話は抽象的な表現や比喩が多くとらえどころがない、その分教養が求められる。おそらく何か(聖書のある部分や、過去の哲学者の思想など)を名指しで批判しているような部分もかなり多いと思われるが、当然ながら殆どわからない。
ニーチェという人は若い頃に所謂「梅毒」に冒されたそうである。現役で活動していた時代の病気の影響というのはわからないが、結局は晩年その梅毒が原因で人生を終えることになるので、常に病気は影響していただろう。彼にとっては不幸なことだが、例えばこの病気がなかったら、彼の人生は違ったものになっていたかもしれない。そうなると後世に残したものも違ったものになっていたのかもしれない。
訳者あとがきに書いていたが、訳者はツァラトゥストラの「読書する怠け者を、俺は憎む」という一言が気に入ったそうだ。そして自分は「読書もしない怠け者」なのだそうである。そう言われて考えてみれば、私自身はどう考えても間違いなく「読書する怠け者」である。ツァラトゥストラに憎まれたくはないが、これはなかなかどうしようもない。ある意味でツァラトゥストラは極めて正しいことを言っているということだろう。
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