2019年4月6日土曜日

嘘みたいな本当の話


嘘みたいな本当の話
嘘みたいな本当の話 みどり


高橋源一郎 選
内田樹 選



2015年3月10日 第1刷
2016年7月10日 第1刷

発行年月日は文庫版のもの。この本はアメリカでラジオの企画として行われた「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」を参考にしたものだそうだ。一般の人たちから自分の周りで起こったなにか不思議な本当の話を集めて読み上げるというもの。

それと同じことをやろうとして企画したようだが、実験の結果、字数を制限した方が良い、というのとジャンルを限定した方が良いということになったらしい。というわけで、「戻ってくるはずがないのに、戻ってきたものの話」とか「そっくりな人の話」とかいう形で限定されていて、分類されている。「みどり」の方は続編というか、後から出たものだが、内容はほぼ同じである。

流石に奮って応募してくるものだけあって、面白い話ばかり。それぞれが短いので読みやすく、2冊ともすぐに読み終わった。

確かに面白いのだが、結局それだけのような気がした。元々がラジオの企画なだけに、所謂職人さんが面白い話を送ってくるような形で同じ人が何度も採用されている。新聞の日曜版の投稿欄とか、昔の雑誌の巻末にあった読者投稿欄とかそういうものを読んでいるようだった。どうせならそれぞれの話に選者がコメントを付けて欲しかった。

個人的に血気盛んだった昔から、他人の恋愛話を聞くのが(ノロケ話でも不幸話でも)苦手である。人にもハッキリそう言っていたし、露骨に嫌な顔をするので私にそういう話をする友人は少なかった。本を読む上でそう感じたことはなかったが、この本の話には恋愛の話も多く、別に不快ではなかったが読んで何故かそういう若い頃を思い出した。

内田樹が書いているように、日本人の書く文章というのは年齢や地域、性別などによる違いがなく、内容次第では何処の何歳の人が書いたのか全くわからない。アメリカはそうではないらしい。内田樹はこれについて「すごいこと」だと言っているが、やや企画としては残念な形だったのではないだろうか。ある意味凄く「ナショナル」なものになったのだと思うが、これは日本の「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」ではないだろうなあ、と思った。

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