2019年6月11日火曜日

サザエさんの東京物語


サザエさんの東京物語
長谷川洋子 著


2008年4月1日 初版第一刷発行

作者はサザエさんの作者、長谷川町子の妹である。サザエさんは当初は長谷川家が家族で経営していた姉妹社という会社が出版していて、長谷川町子の家族も大きく関わっている。その話は長谷川町子による「サザエさんうちあけ話」に詳しく書いてある。個人的に子供の頃からその「うちあけ話」が好きで、特に親しんでいた私にとっては、長谷川家の人々というのはサザエさん一家と同じくらい馴染み深い。

この本は2008年初版だが、不覚にもこの本が出ている事自体知らなかった。ちなみに私は長谷川町子美術館に一度だけ行ったことがあるが、それが確か2009年のことだったので、その時にどこかで気づいても良さそうなものなのにと思いながら読んでいた。だが、この本の最後に書かれているが、最終的に一番下の妹であるこの本の作者長谷川洋子と、姉2人(まり子、町子)とは絶縁状態になっていたようで、当時はまだ長女まり子も存命のはずで、美術館でこの本が紹介されているなどということはおそらく無かったのだろう。

基本的にこの本はその長谷川町子を中心とした家族の思い出の話、そして作者自身の話が書かれている。家族の話は「うちあけ話」ともかなり内容がリンクしている。その中で「うちあけ話」に書かれた話の裏側や、衝撃の事実がいくつか書かれている。そのうちの1つで印象的だったのは、長谷川町子が「うちあけ話」で、胃潰瘍の手術を受けた話を書いているが、これが実は胃ガンであり、町子は「ガンになったら自殺する」と常々言っていたために、家族は隠さざるを得なかったのだという。

作者は流石に文章が上手く面白く、思わず読んでいて吹き出してしまうようなエピソードも数多く書かれていた。最終的に絶縁状態になっていたことは書いてあるが、誰についても特に恨みがましいことは全く書かれていない。この本の存在を発見するのが遅れて、その分損をしたような気もするが、2019年にサザエさんと長谷川家の人たちについて再び思い出すことができたことを嬉しく思う。




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