2019年6月16日日曜日

精神の哲学・肉体の哲学


形而上学的思考から自然的思考へ
木田元
計見一雄


2010年3月10日 第一刷発行

哲学者・木田元と精神科医・計見(けんみ)一雄の対談本。計見一雄の方が10才程度若く、木田元に対談を申し出たという経緯だったそう。7回に渡って行われた対談の記録だそうだが、木田元は当初趣旨がわからずに、言われるままに歴史を語っていただけだったと自分で感想を延べている。そして「世界の思想史も、〈精神の哲学〉から〈肉体の哲学〉へ向かっているのではないかと見当をつけ、それを確かめようという」計見一雄の意図が途中からわかってきたと前書きに書いている。

確かに真ん中を超えるあたりまで、殆ど木田元が1人で哲学史について話をする形で、計見一雄は多少合いの手を入れる程度。他の木田元の著書でも読んだことがあるような話が続く。とはいえ、対談の形式になってはいるので、なんとなく噛み砕かれているというか、わかりやすい印象で、哲学史の入門書としても優れている。

フォアゾクラティカーの話から始まって一通り進んで近代まで行くと、計見一雄が話し出すところも多くなってくるのだが、そうなると木田元が「はい」とか「ほう」とか言うだけになっている。そのまま終わるわけではなく、最終的にメルロ=ポンティの話まで行くと、ついにお互いの話が噛み合うようになる。

一人一人の話も面白いので、この本自体はまた読み返したい内容だが、もう少し、もう一回分くらい対談が続いていても面白かったのではないだろうか。



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