2019年2月23日土曜日

イソップを知っていますか


イソップを知っていますか
阿刀田高 著


2010年1月30日 発行

いわゆるイソップ物語というと、小学校の教室にそういう本が置いてあったような気もする。手にとった覚えもないこともないが、特に印象は残っていない。ただ、よく聞く舶来物の昔話はだいたいこれなんじゃないか程度の認識だった。もちろんアリとキリギリスとか有名な話は知っている。

イソップというのは紀元前のギリシャにいた人物の名前であり、彼の足跡と彼が話した話というのが纏められたものがイソップの寓話である。彼の歴史的な存在は古いことがではっきりはしておらず、物語は長い歴史の中に伝わる中で、色んな手が加えられて進化したものだろう。

驚くのは、16世紀の終わりから17世紀にかけて日本に渡来した宣教師によってイソップの物語が日本語に訳されているという。この本はその「イソポのハブラス」と「伊曾保物語」を底本として、そこから130程度の話を紹介している。

寓話を短く次々と紹介していく形で書かれていてこの本自体のリズムがすごく良くて楽しく読めた。そこから広げて筆者が紹介する余談というか、別な歴史の話、物語の話、というのも非常に面白いし、よくこうも横に繋ぐことができるものだと感心する。阿刀田高はこの手の本でたまに「小説家としては…」と言って勝手に話を追加したり、改変したりすることがあって、それが非常に面白いのだが、この本にもいくつかそういう面白い話が書かれていた。

イソップの物語自体は私自身もっと知っているかと思っていたが、案外殆ど知らない話ばかりだった。こうしたものが、江戸時代より前から日本語に訳されていたというのは考えてみれば不思議ではないのだが意外なことで、その後の日本の文学や話芸等に与えた影響も思っていたより古い時代からあるに違いない。

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