2019年9月30日月曜日

四千万歩の男(四)


四千万歩の男(四)
井上ひさし 著


1993年2月15日第1刷発行

本文終了が677ページ。これまでの巻で一番厚いが、たぶん五巻はもっとある。江戸に戻ってきた伊能忠敬が年を越して冬を越し、翌年の春になってまた測量旅行に出かける。最終的にはまた蝦夷に向かうのだが、その前に東海道方面に向かい、江ノ島にいるところで終わっている。

出かけるまでも色々あったが、出発してからも色々な出来事に忠敬は首を突っ込む。本業を疎かにしている様子ではないのだが、それにしても首を突っ込む出来事自体が揃いも揃ってバカバカしいというか、くだらないことばかり。あまりのことで、いったい自分は何を読んでいるのかよくわからないな、と思いながら読んでいたら、そのこと(無関係のことに首を突っ込み過ぎること)が咎められて忠敬はピンチに陥る。まあそのピンチに陥れる策略もあまりのことだが、それに反駁しようとする策略もあまりのことだった。

全体として話自体に悪い印象があるわけではないのだが、長く読んできて気になる点も出てきている。松前吉助という忠敬の従者になっているような人物がいるのだが、彼は力持ちであり、酒を飲んで暴れているところを、母親がアイヌの人というところを見込まれて旅に加わる。この人が今や粗暴な所は全く無く、頭はいい、動きは速い、手回しが良い、という妙に都合の良い存在になってしまった。酒を飲んで暴れるというのは元々欠点だったはずなのだが、その後は飲んでいる場面もあるが、暴れた様子はない。

そして、1巻の蝦夷への往路に登場した「お捨」という娘は身寄りがなかったので、忠敬は先に江戸の知り合いのところに行かせたことになっているのだが、結局忠敬が江戸に戻った時にも出てこない。これから出てくるのか。

元々忠敬目線のみで書かれた本なのだが、全体として忠敬以外の人物、特に一緒に旅をする仲間たちそれぞれの個性が消えかかってきているように感じた。この辺の一緒に回ったメンバーというのはある程度史実を反映しているはずで、勝手に個性を与えにくいという面もあったのだろうか。




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