2019年9月19日木曜日

四千万歩の男(二)


四千万歩の男(二)
井上ひさし 著



1992年12月15日第1刷発行

見た感じ一巻よりは若干薄いかと思ったが、それでも634ページもある本だった。それでもまだ蝦夷(北海道)を反時計回りに半分回ったところ。時間にして、この話全体が始まってからまだ1年も経っていない。結局この本は全5巻で終わっているが、井上ひさしにその気があれば、この小説はもっと長く出来たのではないだろうか。

伊能忠敬について、敢えて予備知識をいれないようにして読んでいるが、学校で彼について習った時に途中で捕まって牢に入れられた話は聞いたような気がする。そしてそうした場面がこの二巻にはある。当時の蝦夷(北海道)という土地柄、アイヌの人々が住むところに江戸幕府(つまりは和人)が侵略を仕掛けている時代のことで、どうしてもその話が中心になっている。当時の所謂「未開の地」への侵略は洋の東西を問わず、侵略を企てる側による暴力と略奪と奸計を持って行われていて、この話もその例に漏れない。この小説では伊能忠敬自身もそのことにうんざりしている。

読んでいる印象としては、基本的には井上ひさしは伊能忠敬のおそらくは単調な日記を元にして、それ以外の記録や逸話を盛り込んで、更にその間を類推と創作で埋めている感じを受ける。伊能忠敬自身がアイヌに対する和人の非道な行為についてどう考えていたのかはわからないが、歩いて回った以上は日記に書かれた以上に当地の人々と関わりが必ずあっただろう。

それにしてもこの巻では忠敬はアイヌに絡んだ色々な事件に巻き込まれ過ぎるほど巻き込まれている。アイヌ、松前藩、江戸幕府が絡んだ謀略の応酬は少し驚くような形まで進み、もはや測量がちゃんと出来ているのか読んでいる方が心配になる。そしてその色々あった二巻らしく、最後も謎の人物が倒れているのを発見したところで中途半端に終っている。まだ忠敬は56歳である。




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